2018年4月9日

翻訳ジョーク考№8(エスニック・ジョーク)

 今回は「翻訳ジョーク考」の第八回目です。
 この記事のコンセプト及びジョークの選び方は第一回をご参照ください。
(第一回の記事はこちら。)

 

 使う本は、Fred Metcalf氏編The Penguin dictionary of Jokes(UK版)です。
 今日の記事は100ページ3番目のジョークに決まりました。
 カテゴリーは「エスニック・ジョーク(Ethnic Jokes)」で、試訳は以下のようになります。 

 

エスニック・ジョーク:9

 

雪が降ってればユードピア航空の飛行機はすぐにわかるよ。プロペラにチェーン巻いてるやつだから。

 

Ethnic Jokes : 9

 

You can always tell a Udopian Airlines plane when it's snowing. It's the one with chains around the propeller.

(The Penguin dictionary of jokes, wisecracks, quips and quotes, compiled by Fred Metcalf, Penguin, 2009, p.100.)


 ジョーク自体の内容にわかりにくいところはなさそうなのですが、今回は人種をネタにしたかなりきわどいカテゴリーの「エスニック・ジョーク」からの引用になっており、そこには「ユードピア(Udopia)」というまったく聞きなれない架空の地名が何度も出てきます。

 2003年にこの『ペンギンジョーク辞典』が再販された時に、『テレグラフ』と『ガーディアン』の二誌がそれぞれの書評で「ユードピア」について触れてますので、まずはそれを紹介してみましょう。


 まずは2003年12月8日の『テレグラフ』の書評からの抜粋です。

(『テレグラフ』参照元はこちら。)

 

エスニック・ジョークも微増しているが、それらは巧みにも「ユードピア」の人々に向けられたものになっている。新項目にはカナダ人や菜食主義者が含まれる。どれもみな分類された上に便利な相互参照が付いているので、瞬く間に見つけ出すことができる。

 

 次に2003年12月13日の『ガーディアン』の書評からの抜粋です。

(『ガーディアン』参照元はこちら。)

 

しかしながら、「エスニック・ジョーク」のカテゴリーで何が起きているかを見てみるとたいへんに興味深い。編者はユードピアという国を発明して、具体的なジョークの標的にしながら、例えばベルギー人には悪意を向けないようにしているのである。それでもアイルランド人にそのような救済措置はなくて、彼らには独自の項目が用意されている。奇妙なことだ。

 

 ちょっと見ると、「カナダ人」と「アイルランド人」の他に「アメリカ人」や「スコットランド人」や「オーストラリア人」にも独自の項目がありますので、それだけ近しい関係にあってジョークがたくさんあるところは「ユードピア人」になれないのでしょう。もちろん「イギリス人」もあります。

 ちなみに「フランス人」と「ロシア人」は個別に項目があり、「ベルギー人」だけでなく「オランダ人」や「ドイツ人」、北欧三ヶ国も項目がありません。


 そうなってくると、今回のジョークが元々どこの国を想定して作られたものかは気になるところですが、おそらく、イギリスから見て降雪がネタになるような地域ではないかという見当が付きそうです。

 雪が降ったら何にでもチェーン巻いときゃいいと思ってさ、あいつら飛行機のプロペラにまでチェーン付けてやがんだぜ、っていうノリの悪口に近いジョークでしょうか。


 こういうネタも深入りすると後味が良くありませんので、ほどほどにして切り上げたいと思います。また次回お会いしましょう。

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