2018年4月5日

翻訳ジョーク考№7(おバカな振る舞い)

 今回は「翻訳ジョーク考」の第七回目です。

 この記事のコンセプト及びジョークの選び方は第一回をご参照ください。

(第一回の記事はこちら。)


 使う本は、Fred Mecalf氏編The Penguin Dictionary of Jokes(UK版)です。

 今日の記事は277ページ10番目のジョークに決まりました。

 カテゴリーは「おバカな振る舞い(Stupidity)」で、試訳は以下の通りです。

 

おバカな振る舞い:19

 

彼女っておバカ?物干しロープをピンと張ろうとしたら、家が動いたんですって。

 

Stupidity : 19

 

Is she stupid? She wanted to tighten the clothes-line, so she moved the house.

(The Penguin dictionary of jokes, wisecracks, quips and quotes, compiled by Fred Metcalf, Penguin, 2009, p.277.)

 

 洗濯する場面のせいか健康的な感じで清々しいジョークです!


 ちなみに今回出てきている「おバカ(stupid)」という訳語については遠藤周作氏の名著『おバカさん』の語感を参照しています。

(『おバカさん』Amazon商品リンクはこちら。)


 ところで、物干しロープを家に縛りつけるという状況が、日本でよくあるようにベランダの物干し竿に洗濯物を掛ける感覚とちょっと違うようですので、実際にどんな感じかよくわかるような写真がないか探してみました。


 何となくアメリカの一軒家では広々とした庭にポールを立ててロープを張って干すイメージなので、イギリスのしかもロンドンの住宅密集地で壁などにロープを括りつけて干すイメージかなと思って調べてみました。

 すると、2009年1月29日付の『ガーディアン』 に写真家ジョン・ゲイ回顧展の特集ページがあり、そこにお誂え向きの、屋上で物干しロープを張って洗濯物が掛けてあるロンドンの風景を撮影した作品が掲載されていました。

(『ガーディアン』参照元はこちら。)


 今回のジョークをこの写真に当てはめてみると、屋上で物干しロープをピンと張ろうとしたら家がズッと動いたような気がして、慌てて友だちに報告しに来たという微笑ましい光景が目に浮かびます。

 落語だと『粗忽長屋』という噺に、引っ越しする時に家の柱を風呂敷にくるんで持って行こうとするくすぐりが出ますけど、何か近いものがある気がします。

(「粗忽長屋」を含むAmazon商品リンクはこちら。)

 

 勝手に家元立川談志の『風呂敷』や『厩火事』に出てくるおかみさんの口調をまねて妄想すると、こんな感じでしょうか。

 

「ねえねえねえちょっと聞いてよ、たいへんなんだから! 今ね、お洗濯しようと思って屋上行ってロープ張ってたのよ。今日は風が強いでしょ? あたし飛ばされちゃまずいと思ってさ一生懸命引っ張ったのよ、グッグッグッて。そしたら聞いて! あんまり強く張り過ぎちゃって家がちょっと動いたの、ズッズッズッて! すごくない? あたし屋上で家引っ張っちゃった!」

 

 ……完全に思いつきで書いてみましたが、もしこうなら「stupid」ですね。

 

 『ペンギンジョーク辞典』に、同型のジョークがもう一つ掲載されていますので合わせて紹介してみましょう。試訳は以下の通りです。

 

おバカな振る舞い:18

 

あいつっておバカ?お前いいこと思いついたなって1円やったら、あいつきっと釣銭よこすぜ!

 

Stupidity : 18

 

Is he stupid? If you gave him a penny for his thoughts, he'd have to give you change!

(The Penguin dictionary of jokes, wisecracks, quips and quotes, compiled by Fred Metcalf, Penguin, 2009, p.277.)

 

 こちらもほとんど落語ネタみたいですけど、「おバカ」の代名詞である与太郎さんが出てくる『かぼちゃ屋』という噺にお金のやり取りの場面があって、これとよく似た感じのくすぐりが出てきます。

 

 原文の「a penny」を「1円」で訳しましたけど、最小単位の硬貨なのに、たくさんもらった気になってお釣りを返したら損しちゃうよという、そういう親心的なハラハラ感?で解釈しました。

 このジョークもやっぱり独特のほのぼの感が何とも言えず素晴らしいですね。「えへへ、ありがとう」とか言ってお釣り出しちゃう感じなんでしょうか。

 

 というわけで、今回はのどかな感じでほっとしました。また次回お会いしましょう。

0 件のコメント: