2018年4月10日

映画オススメ度総集編(2018年3月)

 もう2018年度の4月になっておりますが、今回は2017年度最終となる12回目の総集編です。

 

・ミヒャエル・ハネケ『ハッピーエンド』

 (2017年、フランス・ドイツ・オーストリア)★⑤!!!

 

・キャスリン・ビグロー『デトロイト』

 (2017年、アメリカ)★③

 

・ワン・ビン『苦い銭』

 (2016年、フランス・香港)★④

 

・吉田大八『羊の木』

 (2018年、日本)★③

 

・フルーツ・チャン『メイド・イン・ホンコン 香港製造』

 (1997年、香港)★④

 

・ウォン・カーウァイ『欲望の翼』

 (1990年、香港)★④

 

・クリント・イーストウッド『15時17分、パリ行き』

 (2018年、アメリカ)★⑤!!!

 

・『The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ』

 (2017年、アメリカ)★④

 

・ジュリア・デュクルノー『RAW 少女のめざめ』

 (2016年、フランス・ベルギー)★④

 

・ヨルゴス・ランティモス『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』

 (2017年、イギリス・アイルランド)★⑤!!!

 

 3月は以上の10本です。

 以下において、今回は少しネタバレ的な内容を含む紹介の仕方をしておりますのでご注意ください。

 

 今月になって見た映画から3本もオススメ度★⑤の作品があったのは嬉しい限りですが、ホラー作品としてぜひ見て欲しいのは『ハッピーエンド』と『RAW』と『聖なる鹿殺し』の3本になります。

 

* * *

 

 最初に、『ハッピーエンド』は言わずと知れた(?)嫌ホラーの巨匠ミヒャエル・ハネケ監督の最新作です。

(公式サイトはこちら。)

 

 前回の『愛 アムール』に引き続きフランス語で撮った映画で、一部のキャストも引き継いるのですが、現代社会におけるホラーという問題を考える上でハネケ作品はどれ一つ取っても避けては通れない難問を突きつけてきます。

 今回も例に漏れず、タイトルの「ハッピーエンド」について一筋縄でいかない辛辣な物語が展開します。上映がこれからの地域もかなりあるようなのですが、今シアターで見るべき映画としてはもっともオススメの一本になります。

 

* * *

 

 また、『RAW』もある意味で嫌ホラー的な要素に満ちた作品ですが、こちらは見た目のおぞましさ、内臓的な嫌悪感を喚起することを狙った部分があります。

(公式サイトはこちら。)

 

 とは言え、いわゆるスプラッターとかスラッシャーといったジャンル映画とはまったく異なる視点と感覚で観客に吐き気を催させようとしているところがあると思いますので、気分を害しやすい方は体調を万全に整えてから見た方が良いのではないでしょうか。

 近年は「カニバリズム」をテーマにした作品がけっこうあるようなのですが、近作だけでも『カニバル』(2013)、『フリーキッチン』(2013)、『獣は月夜に夢を見る』(2014)などがすぐに思いつきます。つい最近ですと『ゆれる人魚』(2015)もそんな流れの中にある作品でしょうか。

(映画通信簿『フリーキッチン』の記事はこちら。) 

 

 カニバリズムから外れますが、この流れでこじらせ女子っぽい主人公が野性のオオカミに恋をして家とオフィスをはちゃめちゃにする『ワイルド わたしの中の獣』(2016)なんていうトンデモ映画もありました。

 記事にしたこと自体を忘れておりましたが、振り返ってみると個人的にはこういう記憶に残る訳の分からない作品が意外とツボに入ります。

(映画通信簿『ワイルド』の記事はこちら。)

 

 ごく私的な感想で言えば、『ぼくのエリ』(2008)以降の流れの中で恋愛と食人のテーマを、飛び散る鮮血と甘酸っぱい浪漫で語る傾向が顕著になっているのかなと思ったりもします。

 しかしながら、例えば近年でも『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013)や『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(2014)や『ザ・ヴァンパイア』(2014)などがありますように、ヴァンパイアものの伝統にはそもそも恋愛と食人(というか吸血?)のテーマが常に伏在しておりました。

 『ぼくのエリ』についてはスプラッター要素の強い映像美という点での衝撃が後続するジャンル映画に多大な影響を及ぼしているのだろうと、裏付けもせずに勝手に考えています。 

 

 また、思春期における性の目覚めをテーマにした成長物語として、『RAW』を名作『イット・フォローズ』(2015)と結びつける指摘がいくつもあるようです。

(映画通信簿『イット・フォローズ』の記事はこちら。)

 

 まあ、いずれにせよホラー・ジャンルのどこに位置づけるかで悩ましいということは、『RAW』はそれだけオリジナリティのある良質なホラー作品だという点で申し分ないからなのでしょう。ジャンル・ホラー好きは必見ですよ。

 

* * *

 

 最後に『聖なる鹿殺し』ですが、これもまた上記二作とは異なったテイストの嫌ホラーな内容で、先月は本当に豊作でした。

(公式サイトはこちら。)

 

 映画じゅずつなぎ的な言い方をしますと、この作品のハイライトで私はまず、ブレッソン『バルタザールどこへ行く』(1966)とそれを受けたハネケ『セブンス・コンチネント』(1993)を想起しました。三作全て見た方なら私の指摘している箇所はすぐにわかると思いますが、まさにあの場面です。

 ネタバレは控えたいのでこれ以上は詳しく言えませんが、その後に続く圧巻のカーニバルがさらに別のある映画へのオマージュであろうことは、この流れの中で気づかないわけにはいきません。

 

 つまり、『聖なる鹿殺し』はその辺を狙い撃ちしているということで、こちらとしては精神衛生を万全に整えずに劇場に行くとダメージを受ける危険性がある作品だということでしょう。

 

* * *

 

 不思議なことにこうして並べると嫌ホラーの親分格であるハネケの『ハッピーエンド』が、なぜか一番大人びた作品に見えてくるのは気のせいでしょうか?

 『15時17分、パリ行き』で御大イーストウッドが変わらぬやんちゃ振りを発揮しているのを見ると、それはそれで映画とは何と素晴らしい芸術なのだと思わずにはいられないのですが……。

 

 余談ですが、家元立川談志が確か『浮世床』で「おれくらい名人になると下手にやンの難しいんだ」というようなことを言っていたと記憶しております。それから三代目金馬の『浮世床』を聴いたりすると、その「下手」をあまりにも上手にこなしているようで、私はひたすら感動を覚えます。

 ホラー作品はとかく露悪的、偽悪的、俗悪的なジャンル映画と地続きであるということもありますが、今月は改めて芸術(あるいは芸能)における洗練というのは何なのかと考えさせられました。

  

 

 ところで今回は2017年度分では最後の総集編ですので、オススメ度★⑤リストを備忘録を兼ねて掲載しておきます。

 『ホラーのミ・カ・タ』による偏った見方のリストになりますが、劇場に行ったりDVDを借りる際の参考にしていただければ幸いです。

 

オススメ度★⑤リスト(2017年度)

・ヨルゴス・ランティモス『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』

・クリント・イーストウッド『15時17分、パリ行き』

・ミヒャエル・ハネケ『ハッピーエンド』

・行定勲『リバーズ・エッジ』

・ウルリヒ・ザイドル『サファリ』

・ルイス・ブニュエル『ビリディアナ』

・ルイス・ブニュエル『皆殺しの天使』

・ルイス・ブニュエル『砂漠のシモン』

・オズ・パーキンス『フェブラリィ―悪霊館―』

・ステファヌ・ブリゼ『女の一生』

・アレハンドロ・ホドロフスキー『エンドレス・ポエトリー』

・ジャン=ピエール・メルヴィル『仁義』

・フェデリカ・ディ・ジャコモ『悪魔祓い、聖なる儀式』

・フランソワ・オゾン『婚約者の友人』

・アンドレス・ムシェッティ『IT イット ”それ”が見えたら、終わり。』

・北野武『アウトレイジ 最終章』

・リドリー・スコット『ブレードランナー ファイナル・カット』

・アマンダ・シェーネル『サーミの血』

・エミール・クストリッツァ『オン・ザ・ミルキー・ロード』

・黒沢清『散歩する侵略者』

・ポール・バーテル『デス・レース2000年』

・チャイタニヤ・タームハネー『裁き』

・アンジェイ・ワイダ『残像』

・ビリー・オブライエン『アイム・ノット・シリアルキラー』

・石井裕也『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

・オリヴィエ・アサイヤス『パーソナル・ショッパー』

・M・ナイト・シャマラン『スプリット』

・キム・ギドク『STOP』

・ホセ・ルイス・ゲリン『ミューズ・アカデミー』

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